笑って眠れ

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殿、利息でござる!

続きまして『殿、利息でござる!』の感想です。

 

いやー、タイトルと宣伝物(リーフレットとかポスター)からして、絶対ギャグ満載の時代劇だと思ってすっかり油断して見に行ったんですけどやられた!!

勿論笑いも多々あったんですけど、途中で何度もウルっとくる箇所があり、最後は感嘆の溜息ばかり洩れて、本当にいい話でした。

以下、少しネタバレ。

 

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原作は歴史学者・磯田直道さんの本。

磯田さんは別の時代劇映画『武士の家計簿』の原作もしてるんですが、その武士の家計簿と同じく、この映画も実話がベースになっています。

舞台は江戸時代中期の1770年代。場所は仙台藩の吉岡宿という小さな小さな宿場町。

この吉岡宿は一応仙台藩のくくりには入ってて、仙台藩主の家臣が監視してたりするんだけど、実は別の人の領地。なので伝馬(大名が移動するときに荷物を運ぶ)の役を負わなければならないのに、仙台藩からは一銭も補助金が出ない。

伝馬役は言ってしまえば荷物を運ぶだけなんだけど、そのために馬をきっちり管理してなきゃいけないし、荷造りにかかる費用なんかも全部吉岡宿の持ち出し。

もともと貧しい村だったのにこの伝馬のせいでもっと貧しくなり、夜逃げする人たちが増え、破滅寸前。

吉岡宿の未来を考えて立ち上がったのが、ここにある造り酒屋・穀田屋の旦那、十三郎

(阿部サダヲさん)。

十三郎は最初、大名に吉岡宿の現状を直訴しようとするんだけど、当時は大名に商人が声を掛けて意見なんてしたら斬り殺されるのが普通の世の中。

慌てて止めに入ったのが、茶の修行先である京都から嫁を連れて故郷に帰ってきたばかりの菅原屋の主・ 篤平治(瑛太さん)。

この菅原屋は実は吉岡宿イチの切れ者というか、のほほんとしてるんだけど面白い発想をする人。その彼がなんとはなしに口にした作戦を、吉岡宿の人たち全員で実行しようと奮闘することになります。

その作戦というのが

『お金に困っている仙台藩主にお金を貸し付け、利息を取り、その利息を伝馬代に当てよう』

というもの。

何気なく口にしてしまった一言を実現しようとする周りに、最初は「マジで?!」って感じだった菅原屋だけど、やがて吉岡のために奔走することになる。

 ただお金を貸すと言っても、問題は山積み。

まず貸したお金は戻ってこない(何十年もかかって返済されるから)。

利息は伝馬代として吉岡宿のために使うので、貸した側にメリットは何もない。

そしてさすがに『藩』に貸すお金なので、ある程度まとまった額でなければならない。

その額一千両。現代の金額にして3億円です。

この一千両を、吉岡宿の商人たちが分割で用立てようと言うことになったんだけど、元金が返ってくるとも限らず、利息は吉岡のためにボランティアで放出という条件で、果たしてお金が集まるのかが問題。

吉岡イチのお金持ちは、造り酒屋兼金貸し業を営む浅野屋。

だけどこの浅野屋は、親の代からのドケチで有名で、なおかつ借金の取り立ても厳しい。

現主の甚内(妻夫木聡)もスッとした顔してお金にはシビア。

しかもこの浅野屋は、実は『金貸し作戦』の発起人である穀田屋の実の弟。

(妻夫木さんと阿部サダヲさんという、似てない兄弟w)

浅野屋は本来長男のこの穀田屋が跡を継ぐはずだったけど、何故か兄が養子に出され、弟が継いでいる状態。兄の穀田屋はこの浅野屋に何とも言えない感情を抱いてた。

浅野屋に用立ててもらえれば助かるけど…みたいな状態。

そして仙台藩で財政を担当する萱場杢(松田龍平)は、借金嫌いで有名。

借金をするなら貨幣の量を増やすか重税を取れ、というスタンスの人。

万が一お金が集まっても、この萱場杢を動かせなければ話は立ち消えになってしまう。

 

吉岡宿の人たちが自分の家財を投げ打ったりしてお金を作ったりしていたのには熱くなりました。

一方で自分の名誉のために用立てるぜ! みたいなエゴ丸出しの人もいて、お金集めも人それぞれ。これも面白い。

それから、藩に願い出るにはそれなりに身分のある人(農民の代表や代官)の力添えが必要なんですけど、そういう人たちは最初は協力を申し出るも、藩に睨まれると怯んだりしてしまうわけで……。

そういう、人々が奔走したり葛藤したりする様が当時の時代背景とともに丁寧に描いてあって良かったです。

そしてメインというか、心打たれたのはやはり、妻夫木さん演じる浅野屋の秘密ですね。

最初はいけ好かないキャラとして描かれてた浅野屋だけど、実は誰よりも吉岡宿のことを考えている人だった。前・浅野屋ですでに亡くなった兄弟の父親も、ケチと思われてたけどそうではなかった。

浅野屋の後を継ぐはずだった兄・穀田屋が養子に出されたのには深い訳があり、それが明らかになってからのシーンは涙腺が緩みました。

うだつの上がらない父・穀田屋を嫌っていた息子が、最後の250貫匁を用立てたシーンが一番心に来ましたね。

 

舞台になった造り酒屋・穀田屋は現在も残っています。エンディングにそれがちらっと映るんですけど、とても素朴なお店で、何故かここでもウルっと。

自分たちの故郷を守ろうとする人たちの情熱と、兄弟・親子の絆に心打たれた映画でした。